たまりば

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Posted by たまりば運営事務局 at

一番気に入っているのは、ブルー

上限の月

「これから、か。なんか上弦の月をモチーフにしたような、リングって作れます?」
カイはにっこり笑って、うなずく。
「これから満ちていく、上弦の月をデザインしたリングですね。もちろんですよ。それに
れいさんのブルー・アイが夜空を思わすようなデザインにしていいですか?」
れいは、思わず、「すごい!」と喜びの声を上げる。
一番気に入っているカラコンは、ブルーだし、それに似合うリングを作ってもらえるなんて、かなりうれしい。
「シンプルなシルバーを土台に、ブルーの石で月をかたどったものをリングに埋め込んだら、服とかにもひっかからないし、毎日付けられると思いますが、そんなのはいかがですか?」
れいは、もうワクワクしている。
「すごい、カイさん、そんな感じの、ほしい!石は、ラピスがいいかな」
「そうですね、シルバー土台にラピスはとても相性がいいと思います」
値段もそんなに高くはなく、去年の自分にお疲れ様のご褒美、そしてこれからの自分に
だんだん満ちていく上弦の月のラピスが希望を与えてくれるような気がした。
「どれくらいで作ってもらえるの?」
「今、取りかかり中のものがあるから、1ケ月くらいで、れいさんのリングは完成できると思います」
「きゃー、うれしい!」
「僕もうれしいです。お客様からオーダーいただいて、そのジュエリーを想像して作り上げていくのが、何よりも楽しみですので」
咲子は満足そうに微笑む。
「だから、カイちゃんは、ドリンクを考えるのも幸せなんだよね」
カイは、うれしそうにうなずく。
「でも本業はやっぱりジュエリー・デザイナーになりたいですね」
れいは指輪の出来上がりを楽しみにしながら、カイが作ってくれたカクテルを飲んだ。
その味は、もう去年の自分にお疲れ様ではなく、明日からの希望の味がして、れいは、カイの心遣いに感謝した。  


  • 2015年02月25日 Posted by 弘せりえ 2014dec at 14:25Comments(0)短編

    右の薬指に、はめられるのがいいかな

    右手に指輪

    「実はねー、私、この間、このネックレス作ってもらったんだ」
    咲子はタバコ片手に、襟元を少し開く。そこには小さいけどキラキラした存在感たっぷりで、思わず見惚れてしまうほどかわいい天使の羽根のようなシルバートップのネックレスがあった。
    「うわ~、かわいい!私もなんか作ってほしい!」
    れいは思わずそう叫んだ。が、思い出したように言う。
    「でも、ハンドメイドだと、お高いのかな?」
    咲子は全然予算内だと言う。
    カイは、写真集を見せながら、れいに説明する。
    「素材によるんですけど、ゴールドは、金自体が高いから、そこそこ値段しますけど、
    シルバーなら、この結婚指輪は一対で、数万円くらいです」
    「え?結婚指輪で、1個、2~3万ってこと?」
    カイはやさしく笑う。
    「このご夫婦は、いろいろ事情があって、そんなにお金が出せないけど、世界で唯一の物がほしいということでしたので」
    確かに高いブランドの結婚指輪でも、せいぜい相手の名前を彫ってもらうくらいでしか
    唯一無二の品とは言えない。
    でもカイがつくれば、値段に関係なく、二度と再び同じものは誰も作れないのである。
    「私も、そうだなー、指輪がほしいな」
    去年、失恋したばかりのれいがつぶやく。
    「右の薬指に、はめられるのがいいかな」
    時々、左にもしたりして、とれいは考える。
    カイはそんなれいの様子をじっと見つめる。
    「ドリンクと一緒で、イメージや、雰囲気だけでも作れますし、こういうデザイン、というのがあれば、それでもOKですよ」
    咲子とれいは二杯目のドリンクを注文しながら考えた。
    咲子は、「これからずっとHAPPYな気分でいれそうなドリンクで」
    れいは、思わず本音を言ってしまった。「去年はおつかれさまでしたって感じので」
    先程のご飯のときに、彼氏と別れた概要は聞いていた咲子は、ドンッとれいの背中を押す。
    「これからはきっとHAPPY続きだよ!」
    そんな二人のやりとりを見ながら、カイはドリンクを作っている。それをぼんやり見ながら、れいは思わず、こんなことを口にしてしまう。  


  • 2015年02月22日 Posted by 弘せりえ 2014dec at 14:15Comments(0)短編

    本業はジュエリー・デザイナー

    ジュエリー

    カイがれいの注文のドリンクを作っている間、咲子が教えてくれた。
    「カイちゃんは、もちろん、普通の店においてあるカクテルとかいったもの、何でも作れるんだけど、お客さんのイメージとかインスピレーションでお酒を作るのが楽しみなの。例えば、幸せになりそうな気分のカクテル、とか、初恋の味のソーダ割りとか」
    咲子の説明を聞いて、カイが恥ずかしそうに笑う。
    「人から自分の説明を聞くと、照れちゃいますね」
    れいは、興味深げにカイを見ていう。
    「どんな味でも作れちゃうんだ?」
    「味というよりも雰囲気かな。だから既成のドリンクを作るより、お客さんをイメージしたり、その時の気分を聞いて、自分なりに想像して作るのが楽しいんです」
    「へぇ、芸術家みたい」
    カイはうれしそうに、できあがったドリンクを、れいのコースターに載せる。
    ラム・ベースのブルーのドリンクで、れいのブルーの瞳を更に美しく引き立ててくれる。咲子と乾杯して飲むと、その甘いやさしさが、咲子との再会の喜びを再確認させてくれた。
    「カイさん、天才!」
    れいの評価に、カイも、咲子も喜ぶ。
    「さっき、れいちゃんが、カイちゃんのこと、芸術家みたいって言ったけど、実はバーテンダーが副業で、本業はジュエリー・デザイナーなんだ」
    咲子の言葉に、カイは苦笑する。
    「どっちが本業かは、微妙だよ。結局バーの収入で生活して、時間があるときに、デザイナーしてるのが現状だから」
    「ジュエリー・デザイナーって、どんなもの作っているんですか?」
    れいの興味津々の問いに、カイは、写真集と実物のサンプルをもってきてくれた。
    「結婚指輪の注文がメインかな。それも、僕は、その夫婦の両方を知っている常連さんと
    かに依頼されることが多くてね、相手を知っているだけにいろいろ悩むんだけど、またそれが楽しいんだ」
    カイが見せてくれた写真集には、作成後撮った指輪やネックレスの写真が載っていた。
    また、実物も、繊細で大胆で、かなりセンスがよいものだった。  


  • 2015年02月19日 Posted by 弘せりえ 2014dec at 14:05Comments(0)短編

    バーにあまりきたことがない

    バーで飲んでいる女性

    平原れいは、今夜、以前の職場の先輩である前川咲子に誘われて、とあるバーで飲んでいた。そのバーは、ビルの地下2階にある、カウンターだけの小さなお店だった。
    さっきまで、イタリアンの陽気なお店でご飯を食べていたので、ガラッと雰囲気が変わる。
    「れいちゃんのきれいなブルー・アイが引き立つ照明だといいんだけど」
    咲子は、行き慣れているバーは、バーらしく、照明が薄暗いそうだ。
    が、入って奥の席につくと、そこにアンティークのランプがあり、ぽうっと明るくれいの顔が映し出された。
    バーのお兄さんは静かにコースターを持ってくる。
    「咲ちゃんはいつものでいい?」
    咲子はいつも最初にベルギービールを頼むらしく、うなずく。そして、れいを紹介する。
    「こちらは平原れいちゃん。1年前まで同じ会社にいた後輩なんだ。れいちゃん、バーテンダーのカイちゃん。よろしくね」
    カイと紹介された青年は、咲子と同じくらいの年だろうか、大きな体にやさしいオーラをもつ人だった。
    「平原れいです、初めまして」
    れいは、あまりバーにきたことがなく、何を注文していいのかわからない。
    これといったメニューもないまま、迷っていると、咲子が笑った。
    「メニューがないバーなのよ。で、カイちゃんは、その人をイメージしたドリンクを作ってくれるの。もちろん、自分で注文もできるし、かなり自由なお店なの」
    咲子にベルギービールを持ってきた、カイが、れいを見つめる。
    「きれいなブルー・アイですね」
    やはりランプの明かりで、れいの瞳の色がわかったようである。
    「特に決まった種類の飲み物がなければ、ベースを指定してもらえば、その時のお客様の
    気分にあったものをお出ししますよ」
    カイの柔らかい声に、れいはなんだか安心する。
    「ラム・ベースで、咲子先輩に再会乾杯、みたいなイメージとかで作れたりする?」
    「ばっちりです。任せてください」  


  • 2015年02月16日 Posted by 弘せりえ 2014dec at 12:47Comments(0)短編